茨城大学 人文社会科学部法律経済学科 准教授

2005年 文理学部社会学科卒業

 

 

 

 私が大学教員という仕事を将来の自分の仕事として意識したのは、大学入学後さほど時間をたたずに訪れました。当時、今は亡き村松安子先生が、社会学科の1年生全員が履修するマクロ経済学を講義する姿に憧れを抱いたことがきっかけです。

 東京女子大学のある杉並区で生まれ育ち、東京女子大学のすぐ近くにある私立の女子高校に通っていたこともあり、私にとって東京女子大学を受験することはどこか当たり前のように感じており、また合格通知を手にして入学式を迎えるまでは高校の延長のような気持ちでおりました。しかし、入学式を終え、授業を受ける中で知り合った多くの友人たちが入学を機に、親元を離れ一人暮らしをしていることを知った時、東京女子大学が伝統ある女子大であることを痛感したのです。

 私は、高校時代から開発途上国の貧困問題などに関心をもっていたため、迷わず、開発経済学が専門の村松先生のゼミを選びました。ゼミでは、分厚い英語で書かれた開発経済学のテキスト(表紙が黄色だったため、タウンページと呼ばれていました!)を輪読するということもあり、とても厳しいゼミだと知られていましたが、私にとっては刺激的でした。何よりも尊敬する村松先生からご指導いただいたことが幸せでした。ゼミで面白い議論に触れるたびに、図書館で原文を探し、読んでいました。

 現在の研究テーマと出会ったのも在学中でした。大学3年生の冬休みに、NGOのスタディーツアーでバングラデシュを訪れたことがきっかけでした。アジアの最貧国とされるバングラデシュの首都ダッカで、無数の若い女性たちが弁当袋を手にさげて縫製工場から出てくる光景を見た時、将来この国を変えるのはこの女性たちかもしれないと思ったのです。女性たちの顔つきはどこか自信に満ちているようにも感じました。この出会いから早14年、現在までバングラデシュやインドを中心に、縫製産業で働く女性たちを対象にした調査研究に取り組んでいます。

 私は、国際貢献にかかわる仕事をしたいという漠然とした夢を抱いて東京女子大学に入学しました。今、東京女子大学での学びを振り返れば、まさにその「漠然」とした夢を「具体化」する過程だったように思います。開発途上国での調査研究に基づいて論文を執筆する、これも国際貢献の1つの方法なのだと村松先生の研究姿勢から学び、気づいたのです。講義を通じて、開発途上国の問題やジェンダー問題に関心をもつ学生を一人でも多く増やしたいという先生の思いも感じました。こうしたことは、今の私の原動力となっています。

 

2018年4月から2019年3月まで研究生活を送った英国のロンドン経済政治学院(London School of Economics and Political Science)にて

 

 今の私があるのは、東京女子大学での学びや人との出会いがあったから。そう、切に思います。そこには、東京女子大学が創立以来守り続けてきた、学生の「個」を尊重する少人数教育が強く影響しているように思います。次の100年も、この伝統を守り続けてほしいと、願っています。