SOCIAL ROBOTICS株式会社 
代表取締役社長

1977年 文理学部日本文学科卒業 

 

 

 配膳や案内をするサービスロボットの製造販売をしているSOCIAL ROBOTICS株式会社(http://social-robotics-japan.com/)の代表取締役社長をしています。ロボット業界は95%男性で占められていますから、まず「理系出身ですか?」「今までどんな経験があるのですか?」と質問されます。東京女子大学の日本文学部からロボットへ。卒業後42年が経過する間、様々な職業を経験しましたが、一貫しているのは自立への模索だったと実感しています。

 

 職歴は、大学卒業➡出版社(編集)➡商社(貿易事務)➡英会話スクール(コピーライター)➡編集プロダクション(理系専門書編集)➡幼少受験塾(経営)➡神奈川県(CSR)➡ベンチャー起業①(車・プロダクトデザイン試作)➡ベンチャー起業②(ロボット製造・販売)。

 どんな仕事も無駄はなく、特に偶然理系の専門書の編集をしたことが現在の仕事への大きなコンテンツになったと実感しますが、携帯電話もない子育て時代、子供たちの成長に合わせて調整可能な職場に変えていった偶然の産物でもあります。どんなプログラムになっているのか分からないのも人生です。自宅に近い職場、自宅と職場両方でできる子育て応援の職場など、希望したときに声をかけていただけたことは大変幸運だったと思います。

 

 私は山梨県甲府市の出身で、自営が多く、親戚も会社を経営し、おば達は自ら経営したり経理担当の専務など、女性が働くことに違和感はありませんでした。祖父は政治活動もしており、新しいこと、女性の職業には理解を示した人でした。高校は創立140年を迎える元男子校で100キロを夜通し歩く強行遠足で有名な男女比2:1の男女共学校です。恩師は同校出身が多く生徒のことを尊重し大切にしてくれる方々だったと記憶しています。大学進学に当たり東京女子大学を強く推薦してくださったのは担任です。早速見学に行き、高校と同じくリベラルな学風に安心したのを覚えています。

 入学後、女子ばかりで戸惑うことがありましたが、少人数のクラスですぐに打ち解け、なんと創立以来初のロック喫茶を学園祭で行い、廊下にあふれるほどの盛況になったことが懐かしい思い出です。また高校時代軟式テニス部でしたので、食堂に貼ってあった東京工業大学硬式テニス同好会ポスターを見て即入部しました。今はボールをゴルフボールに変え、年2回の交流を楽しんでいます。大学という学び舎で印象深いこと、それは4年生の秋、前期の古文文法試験だったと思います。「古文研究法」著者小西甚一先生の説が私には理解しやすく合点がいっていたため、大学での講義とは違う解釈で解答しました。お叱りを受ける覚悟でしたが、思いがけず「あなたの解釈で読んだがそれも興味深い、大学に残らないか」とお声掛けいただいたのです。それまで講義での暗記力を試されるものを試験と捉えていた私にとって、大学での学びは自学であり、その発表の場であることを教授していただいた瞬間でした。自分の考えを持つ、自立を目指す第一歩であったと感謝しています。

 卒業後の出版社では給料も男女同額、その後の職場も能力を生かすことを期待される環境でした。結婚後まさにM字カーブのなかにいた主婦時代、潜在している人材がもったいないと声掛けで試験的に16時まで勤務もしましたが、全国展開のなかで一泊会議も提示されるようになり、子育てが終了するまで時間制約を自分に課そうと心に決めた瞬間でした。子供たちが社会に巣立った年、私はベンチャー起業しています。偶然のような気もしますが、どこか準備をしていたのかもしれません。今は携帯電話、中食、シッター制度など、働く環境は整いつつあると思います。働く女性のためという文言を目にしますが、子育ては母親だけがするものではなく、日本の世界の未来を託す人材育てとして、子供の周囲を整えていくことが大切なのではないかと思っています。

 

 さて、卒業後に送付されてくる会誌に、先輩方の活動が掲載されていました。戦時、孤児たちへの素早い支援、リアカーにあるたけの物資を積んで支援に行く下りが忘れられません。自分の生活さえ覚束ないとき、困った人に手を差し伸べる行為こそ、東京女子大学の建学の精神かと教えられました。私は準認定ファンドレザーの資格をとり、男女共同参画課の委託を受け、女性保護団体の支援をした経験があります。企業のCSRを回り寄付の依頼をしました。企業の温度差、大変な思いをしている母親や子供たち、保護している民間団体のスタッフがたに触れる機会をいただきました。何かできないかと自身の非力を感じるときです。

 

 東京女子大学での学びは、自立と社会貢献の両立という課題を私に導いてくださったと思います。大学時代は学業に熱心でもなくあまり褒められた学生ではなかった。学びたい気持ちはむしろ今のほうが強いと思います。迷惑をかけた教授や周囲の方々にここでお詫びと感謝を申し上げます。

 在学の方々、例えはっきりとした目標が見つけられなくても、焦ることなくご自分の心のままに、目標がある人は迷わず進んでいってほしいと願います。これまで1万人以上の人と関わってきたなかで、実感するのは女性の優しさと気遣い、先を読む賢さです。でも周囲とのバランスを優先するあまり、それが消極的に映ったり、力不足と誤解されることが多く残念と思うことがあります。男性の思い込みに挑戦する私の課題でもあります。「蒔かれたところで咲く」、私が迷いのとき思い出している言葉です。頑張っている人を人は助けてくれます。どうか強い気持ちをもって進んでください。応援しています。