東京女子大学特任教授

1972年 文理学部史学科卒 西洋史専攻 

 

 

 

 東京女子大学創立100周年を迎え、教員としてお祝いできたことに感慨深いものを覚えます。私は1968年、創立50周年の年に入学しましたので、大学の歴史にとって重要な節目に二度立ち会う恵みが与えられました。

 しかし、私の学生時代は紛争期で勉学に身が入らず、迷いの多い青春でした。教員と学生、学生同士の関係が破れた苦い思い出に、今でも苛まれます。卒業後は、いくつかの仕事をした後、20代後半で結婚し、3人の子供が与えられました。30代の半ばに家族で渡米するチャンスがあり、その時を捉えてアメリカの大学院で神学とアメリカ宗教史を学びました。再び学生に戻った興奮はとても言葉では言い表せません。この2度目の学生生活がなかったら今の仕事に就くこともなかったと思いますから、あの時一大決心をしてよかったと思います。一歩前に踏み出す勇気が大切だと思わされます。

 40代で帰国して初めて大学教師を経験しました。東京女子大学での教員生活は59歳からの10年間ですが、今年度末でピリオドを打ちます。この間キリスト教学の授業を担当し、聖書やキリスト教の歴史、日本やアメリカのキリスト教について講義してきました。またキリスト教センターの働きにも携わり、日々の礼拝や諸行事を通して大学の理念であるキリスト教を学生に伝えることに精力を傾けました。教員になって初めて自分が卒業した大学の歴史を真面目に学ぶことになりました。何と遅い目覚めでしょうか。でも何事も遅すぎることはありません!

 入学時にキリスト教学の必修授業に戸惑いを抱く人たちが、一年たつと大きく変化し、聖書の世界に魅かれていきます。授業や礼拝、諸行事を通して感性豊かな学生たちの人格形成の手助けをしていると実感できるとき、大きな喜びと深い満足を感じます。

 東京女子大学は、100周年を越え、新たな歩みを始めます。われらが校歌の歌詞のように、本学がいつまでも「おとめらの生くる喜び胸打つはここ」であることを望みます。