PwCコンサルティング合同会社 主任研究員
学習院大学 経済経営研究所 客員所員

 

1992年 文理学部社会学科卒業

 

 

 現在、私は外資系コンサルティング会社と大学研究機関を兼業しながら企業等で働く人材の活躍をい かに支援するかを考える「人的資源管理」の調査研究をする一方で、学習院大学と母校の東京女子大学で自身の研究分野に関する教鞭を取っています。近年、当該分野では「女性の活躍」が話題ですが、属性やキャリアの変遷等に依らず人材の持つ能力をいかに発揮させるかを組織の制度やマネジメントの面から検討しています。

 これを自分のライフワークとすることになるにあたっては母校での学び、とりわけ恩師の故村松安子先生抜きに語ることはできません。村松ゼミでは「ジェンダー」をテーマとした文献を輪読しディスカッションしていましたが、当時の私は必ずしもゼミや大学の授業を積極的に学ぶ学生とは言えませんでした。しかし、社会に出て初めて村松先生の授業内容に腹落ちし、大学における「学問」、「リベラル・アーツ」の重要性を知ったのです。

 私にとって「学問」とは、社会における自分の立ち位置を正確に理解し、そのうえでどのように対応していくかを「考える力」の源です。その学問には「専門」という分野と東京女子大がモットーとする「リベラル・アーツ」という分野がありますが、この 2 つが合わさって初めて「自分なりの解」が導き出されると感じています。

 「専門」は、社会における自分の安定したポジションを作る上でとても頼りになるものです。組織における仕事内容はもとより趣味でも「これはほかの人より得意」という「専門」を持つことで自分の居場所を確保できると同時に、それが心の安寧を提供してくれます。私にとっては、それが「人的資源管理」という研究分野だといえます。しかし、専門を持ってフっと気付くのです。専門を追求しすぎると、それが自身の正義であるからこそ、その進化が優先され、ともすると総体的に見た社会や将来への影響を十分に考慮できなくなる可能性がある。つまり、「独りよがり」な結論になってしまう。

 社会で活躍するうえで「専門」は重要です。しかし、ものごとを的確に実践していくには「幅広い総合的な知識」、つまりリベラル・アーツも不可欠であり、これを基礎に置いて初めて専門性が活きると、今強く感じています。現在、縁あって 100 周年を迎えた母校で後輩たちと共に学ぶ機会を得ています。その母校で知り合った学生はもとより、他大の学生にも幅広い教養と胸を張って言える「自分の専門」を作ること、それが自分の豊かな未来を作ってくれるであろうことを伝えています。