東京女子大学人文学科名誉教授

 

1973年 文理学部史学科卒業

 

 

 

 私が入学した1969年は、5月から学生による無期限ストに突入していき、政治や社会の問題を扱う議論や読書会が行われましたが、半年以上授業がありませんでした。それも忘れがたい経験ではありましたが、2年生になり史学科に進学してからは、考古学や日本古代史の授業から、専門的な学問の面白さと厳しさを学びました。貢納制に関する卒論の指導をしていただいた平野邦雄先生からは、自分がこのテーマについて「誰よりも一番知っていると思えるように調べなさい」と教えを受けました。いつも自戒しつつ大事なこととして繰り返し思い出しています。

 卒業後に東京大学大学院に進学し、貢納制の研究を続けていましたが、博士課程の時に結婚、出産を経験し、次第に女性やジェンダーの視点から研究するようになっていきました。そして「女性と仏教」というテーマに出会いました。仏教が女性をどう捉えたのかではなく、女性にとって仏教とは何だったのか、女性が仏教にどのような影響を与えたのかという、女性の主体性を重んじるテーマです。この研究を通じて、国内の日本史、仏教史、女性史、美術史、文化人類学、文学の研究者はもとより、海外の研究者とも交流する機会があり、幅広い時代や学際的な分野の刺激を受けることができたことは幸せでした。

 思い起すと、この研究における女人禁制や穢れ観など重要なキーワードは、実は短期間ながら1年生の時に受けた大森志郎先生の一般教養科目「女性史」で初めて学んでいました。その頃はこのようなテーマを研究するとは想像もしていませんでしたが、女子大の時に蒔かれた種は確実に育っていき、後でじわじわ効いてきたのでした。

 県立の高知女子大学の教員を経て、1992年に東京女子大学に着任しました。史学科の歴史の中でも初めての女性教員であり、学内でもとうとう史学科にも女性教員が誕生したと注目していただきました。入学の年から数えると断続的とはいえ半世紀の間、教員としては27年間を過ごし2019年3月に定年退職しました。

 姉と妹は他学科でしたが、三姉妹ともに東京女子大学で学びました。同じキャンパスで学んだことが、姉妹の絆の一つにもなっています。その意味でも御縁のある大学でした。