株式会社POLA取締役執行役員

1991年
文理学部英米文学科卒業

 

 

「この国は女性にとって発展途上国である」

 

この言葉は2016年、私の勤める㈱POLAが放映したCMのコピーです。

このコピーは賛否両論で大いに話題になり、たくさんのご意見が寄せられました。

「よく言ってくれた」という女性たちの声と、「女性視点のエゴだ」というご批判の声。期せずして、世の中に一石を投じる結果となりました。

その当時、日本のジェンダーギャップ指数は144カ国中114位。先進国の中では最下位層に位置するものでしたので、私どもとしては事実を述べたつもりでしたし、女性の視点で現状を嘆くものではなく、「女性にはまだまだ可能性がある」「伸びしろがある」ということを表現したものでした。

 

そう、私たちにはまだまだ可能性があります。女性たちの限りない能力と可能性。私はそれを東京女子大学で学びました。

1987年、文理学部英米文学科に入学。三陸海岸の港町、宮城県石巻市から上京し、茜寮に入寮。入学式を終え、帰郷する母を校門から見送った時の風景は今でも鮮明に浮かびます。桜の花びらが散る中、だんだんと小さくなっていく母の背中を見ながら、「ひとりになる」ことを実感し、これからは自分で道を切り開いていかなければならないのだと初めての孤独をかみしめた瞬間でした。とはいえ、実際はすばらしい寮の仲間にも恵まれ、寂しさを感じることもなく、バブル絶頂期のなかの学生生活は学びに、バイトに、サークル活動に明け暮れ、人生の船出の準備期間としてはこれ以上ない充実したものとなりました。

英米文学では特に女性文学を主に多くの書籍を読みました。中世から現代にいたるまでの様々な女性たち。宗教観や、生活習慣、文化の違う様々な女性の中にも、現代の私たちにつながる女性の強さ、逞しさ、たおやかさ、したたかさが現れ、時代にあらがい、あるいは従いながらもしなやかに環境を変化させていく姿が描かれていました。おりしも均等法元年、教授陣からは、描かれる時代の女性たちを材料に、折に触れ学生への期待が語られていました。「あなたたちには可能性がある」「これからの社会に風を起こしてほしい」その言葉は「自立」を志す私の胸に大いに響くものでした。

 

新卒入社したPOLAで働き続けること30年弱。自らも結婚、出産、育児というライフステージを体験し、また、化粧品会社という仕事柄、多くの女性たちを見てきて思うことは、やはり「女性は強く、たくましく、しなやかである」ということ、「自分自身で環境を変えていく力がある」ということです。経験を経てきて学んだことは「自分が何をしたいか」という意思をもって行動をする大切さでした。学生時代に読んだ文学の中の女性たちは私の周りにもたくさんいました。「意思をもって」「しなやかに」「環境にのみこまれずに、柔軟に」。

まだまだ女性には可能性がある。今、この思いをさらに強くしています。

 

くだんのCMの最後はこの言葉で締めくくられています。

  「迷うな、惑わされるな。
   大切なことは私自身が知っている。
   これからだ、私。
   自分という旗をたてよう。」